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日本のDX先駆け企業が考える未来の会社と仕事とは?インフォマート・木村慎氏インタビュー

1998年。Windows95が出てからたったの3年後に生まれた株式会社インフォマート。企業間取引を電子化することで、創業から8年、2006年という短期間で、東証マザーズ上場、2015年10月東京証券取引所市場第一部に市場変更までを果たしている。

DXなどという言葉が一般化するずっと前から、日本のデジタルシフトを牽引してきた企業の1つと言えるであろうインフォマート執行役員の木村慎氏に日本のDX・デジタルシフトの現状と展望、これから企業、ひいては日本という国の未来について聞いてみた。

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プロフィール:木村慎
株式会社インフォマート 執行役員 事業推進・戦略営業部門担当。
10年以上にわたり、経理業務の改善提案に従事。業界・業種を問わず44万社が利用する電子請求書の仕組み「BtoBプラットフォーム請求書」の普及拡大に貢献。現在は、請求書電子化の最前線を担うリーダーとして、日本全国430万社の請求書の電子化に向けて取り組んでいる。

業界特化型システムから、BtoBのやりとり全てを電子化。

-インフォマートってどういう会社なんですか?

木村:
私たちは1998年いわゆるWEB黎明期に創業しました。最初はフードサービス業界に関するやりとりを全て電子化することを目的としていました

-どんなことができるんですか?

木村:フード業界では、受発注はもちろん、見積り・価格改定・産地情報・メニューへの繋ぎこみまで、大抵のことは電子化・システム化しています。POSですとか、レジ周りなど、すでに既存のシステムをお持ちの企業とも積極的に連携しています。

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-かなり積極的に連携しているとお聞きしました。

木村:そうなんです。システムの繋ぎこみなど、面倒なことにも、積極的に手を挙げ、実装していくことで、企業間のハブとしても機能しているのがインフォマートの強みのひとつですね。システムベンダー同士を争うことなく、円滑に繋ぎこむ文化を創ったと自負しています。おかげで、フード業界に関しては、企業間やりとりのほとんどは電子化できました。

-かなり業界特化型として始まりましたが、今では業界の枠を取っ払い、BtoBの請求書電子化なども推進していますよね?

木村:2015年から、フード業界だけではなく、あらゆる会社の請求書の電子化をはじめ、企業間のあらゆるやりとりを電子化するために、事業拡大したんです。なんですが…実は、インフォマート最大の特徴って、DX化・デジタルシフトをすることではないんです。

-え?そうなんですか!

木村:私たちは、企業間のやりとりをどうやって円滑にスムーズにするかを考えている企業なんです。結果として、電子化したほうがいいことがたくさんあるんですよね。なので、書類を電子化するのでなく、人間・企業間の「やりとり」を全て電子化するための会社なんです。

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-書類も含めて、人間同士のやりとり=コミュニケーションを円滑にするために、結果、早くて楽なのが電子だったということですね。

木村:そうです。結果的としての、電子化なんです。なので、「会計を電子化しよう」というような、ひとつのシステムで世の中を改善するのではなく、企業間のやりとりのすべてを電子化する必要があったんです。結果として、請求書はもちろん、契約書、経費精算、見積もり・・・色々なフォーマットを作り、事業拡張してきたんです。

-あぁだから、様々な機能があるんですね。

木村:企業の理念・思想が、ちょっと独特なんですよね(笑)。なので、1つのシステムを作ることで、次に必要な課題が見えてくる。お客様から「こういうこともできないの?」という意見を吸い上げ、実装していく。結果として、できることがすごく多くなったんです。

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日本はどのようにDXを進めてきたのか。


-結果として、日本のDX・デジタルシフトを牽引してきた企業の1つかなと思うんですが、実際に日本でデジタルが受け入れられたのって、いつ頃からだったんですか?

木村:緩やかに変わったと思うんですが、LANケーブルがなくなってからのスピード感は凄かったですね。LANケーブルがなくなるのと比例してDXが進んだ。ケーブルから解き放たれて、PCを持ち運ぶことができるようになって、生活にデジタルが溶け込んだ印象があります個人的にも、手に触れるものが進化することが、社会の進化に繋がるように思えたんですよね。

-先ほどフード業界からはじまったとお聞きしましたが、フード業界ってデジタルに若干疎い業界なのかな?という印象がありました。

木村:その通りですね(笑)。ただ、私たちは、デジタルに縁遠いからこそ、無くなりづらい強さを持った業界だとも捉えていました。

-あぁそうか!デジタルに遠くても、成立してるというのは、ある意味ニーズがあって強い業界とも言えますね。

木村:えぇ。多様な企業やお店を、業界という言葉でまとめてしまうのも、違うかもしれませんが、そう思います。なので、最初の頃のインフォマートって、相当嫌われていたんです。飲食業界では一番優先順位が低いのがデジタル化だと思われていたんです。

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-なんだか、フード業界に限らず、日本全体が新しいものを少し怖がる…その縮図みたいですね。どのように広まっていったんですか。

木村:デジタル化することで「楽」で「得する」というのがわかってもらえるようにするのが大事なんです。深夜や開店前の受発注がどれだけ楽になるか、原価の見直しをすることで、どれだけ得をできるか。そういうデジタル化することのメリットを少しずつ分かってもらうことで、広まったと思います。

日本のDX障壁とは?

-日本ならではの、DX・デジタルシフトの障壁ってありますか?

木村:日本は、資格とか役割、ルールの設定が細かくて多すぎる印象があります。役割・仕事も細かく分かれている。これは、すごくいい文化でもあり、悪い面もあると思っているんですよね。役割分担することで、多くの人にきちんと役割がある。世界的にも珍しい民主主義の形じゃないかな。

-あぁセーフティネット的であり、障壁にもなりやすい。

木村:そうなんですよね。なので、何かを決める時に色々な因果関係を考えないといけないので、スピードが落ちる面はあると思います。

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-DX推進が活気付きそうな話題として、2020年10月の電子帳簿保存法の改正がありましたが、どのように捉えてらっしゃいますか?

木村:コロナ禍の影響もあって、テレワーク化も進んでいますよね。世界全体がデジタル化にポジティブな状態じゃないかと思うんです。なので、今までの改正と違って、電子化に大きく一歩踏み出す良いタイミングだと捉えています。2023年10月のインボイス制度に向けて、まずは中規模〜大手企業が取り入れていくためのスタートラインに立った思っています。

-現在の日本のDX進捗は、どのように捉えていますか?

木村:業界ごとの取り組み…例えば、流通系・自動車・建設などは、受発注から請求ふくめての電子化は実は進んでいるんです。今現在は、基本となる請求項目の統一や、ファイル形式の統一などに直面していますね。

-請求項目とかって、企業ごとに少しずつ違ったりしますもんね。

木村:そうなんです。そういうことを業界全体で、共通ルール化しないといけない。なので、今はそういうことを整理しているフェーズですね。こういったことが、しっかりと決まっていないと、既存のユーザーはもちろん、新しく電子請求をしたいと思ったユーザーにも安心して使っていただけないと思うんです。

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-同時に、やはり税金ですとか国家のシステムとの連携も必要ですよね?

木村:そういう国/省庁のインフラともしっかりと連携するのは必須です。ただ、今のタイミングでは、私たちはやはりユーザー視点で推進するのがいいのかなと思います。まずは、使っていただく分母を増やすことが大事なのかなと思うので。なので、電子帳簿保存法の改正は、同業界のベンダーも足並みを揃えて、地盤を整えるきっかけとしてもすごくいい機会じゃないかな。

-競合として、戦うことなく、足並みを揃えるということですか?

木村:結局、今は項目だとか細かいところが決まっていないことで、競合と戦う場ができていないと捉えています。項目だとか、形式の統一がきちんとルール化して、はじめてUIだとかUXで戦えるんですよね。なので、企業ごとに主張せず、統一のルールを決めていければいいなと思います。

-2023年10月のインボイス制度に向けて、一般企業側はどのようにDXを推進していくべきですか?

木村:それについても、私たちベンダー側から、やらなければならないことってあると思っていて。今、自分の会社はどれくらいデジタル化できているのか、その指標がないから、DXって進めにくいんですよね。

-何をもっての「DX完了」だ?と。

木村:そうです。私は個人的に、お金の流れは人が介在しないのが一番いいと思っています。紙にしたり、データを手動で写すことで、ヒューマンエラーが起こってしまう。なので、全く人が介在せずにお金をデジタルtoデジタルでやりとりできることを一番健康な状態として、そこに向かって健康診断みたいな指標が作れたらいいのではないかと思います。そうすることで、DXの最良のカタチに向けて、ロードマップができる。企業ごとに定期検診することで、健康になれるようなイメージです。

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これは、企業の問題か?社会の問題か?

-すごくそもそも論なんですが、このDX…いくつかの法人だけで解決するというよりは、社会課題とも言えると思うんですがいかがでしょう?

木村:まさにそうですね。私たちは、社内で議論をするときに「どうすれば国力があがるか」という言い方をするんです。

-「国力」。何かの例えではなく?

木村:純粋に日本という国の力という意味での「国力」です。日本が、海外のDXに置いていかれることなく、国際的にも新しいことを牽引する国であったらいいなと思うんです。今は、ガラパゴス化なんて揶揄されるようになったことが、悲しいですし、ネガティブな情報も多い。もっと国全体が元気で活性化したらいいなと思うんです。

-そのモチベーションって、何から来ているんですか?

木村:私自身は、やらなくていいこと…例えば、紙への印刷だとか、データの移し替えなどをやらなくて良くなった結果、無駄を増やしたいんですよね(笑)

-無駄を失くした結果、無駄を作る!?

木村:そうです。無駄な時間って、きっと心には必要ですよね。一人一人の心にそういう「必要とされる無駄な時間」が作れれば、きっと次のアイデアが生まれる。それは、きっと日本全体を元気にできるのではないかと思うんです。そういう未来に向けて仕事をすることがモチベーションにつながっているんじゃないかな。

-必要な無駄ってありますもんね。

木村:デジタルの先に待っているのって、そういう人間らしい、時間の過ごし方なんじゃないかなと思うんです。今インフォマートが構築しているシステムって、もしかしたら未来になくなってしまってるかもしれないと思うんですよね。インフラとして、社会に溶け込んでしまうかもしれない。「へー昔は請求書なんて作ってたんだ」という未来が来た時、インフォマートは新しいアイデアを生み出して、動けている会社でありたいんです。そのアイデアを生み出すため、私たちにとっても、無駄な時間が必要だと思うんですよね。

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DX社会実現のために私たちに必要なこと。

-最後の質問ですが、DX実現のために私たちが考えなければいけないこと・学ばなければいけないことはなんでしょうか?

木村:新しい技術とか進化を否定したり、拒否せずに、進んでいくことだと思います。絶対にできたもの、起こったこと、全てを飲み込んで行かないといけない。色々な可能性や未来を否定せずに、取り入れ、その結果、残ったものだけが、本当に必要なものじゃないかと思うんです。

Less/on.

「全てを飲み込む」「新しいことを否定しない」

私たちは、ふと意固地になったり、未来への不安に立ち止まったりする。自らの仕事がなくなるかもしれない未来に怯えずに、「大丈夫。きっと次のアイデアが浮かぶから」と飄々と言って退ける木村氏。無駄のために無駄をなくす、非常に日本の風土にフィットしたDXのための考え方ではないだろうか。

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(おわり)


ありがとうございます。更新を楽しみにしていただければ幸いでございます。
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