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DXと未来の採用。または、これからの世界で私たちができること。ライフネット生命 西田政之氏×インフォマート 中島健氏


2023年インボイス制度導入に向けて、今まさに急ピッチでDX化が進む日本。DXによって「人がいらなくなる。」「雇用が必要なくなる。」「個人の時代。」様々な議論が、次々と生まれている。保険外交員を介さず直販のオンライン生保として創業した、ライフネット生命と、飲食業界の流通を全てデジタルネットワーク化し、請求やあらゆる企業間の取引・契約をデジタルへとシフトさせるプラットフォームを運営するインフォマート。「DX」というキーワードが出る前のWEB黎明期から、デジタルシフトを粛々と推進してきた企業の経営層は、未来の会社のあり方、そしてこれからと現在の採用・教育をどのように考えているのか。その一端に触れられるよう、ライフネット生命副社長兼CHRO(人事最高責任者)・西田氏とインフォマート常務取締役・中島氏の対談をお届けする。

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プロフィール(写真左から)
中島健
株式会社インフォマート常務取締役
10年以上にわたり、経理業務の改善提案に従事。業界・業種を問わず44万社が利用する電子請求書の仕組み「BtoBプラットフォーム請求書」の普及拡大に貢献。現在は、請求書電子化の最前線を担うリーダーとして、日本全国430万社の請求書の電子化に向けて取り組んでいる。
 
西田政之
大学卒業後、証券系投資信託会社でファンドマネージャーを経験。その後、英系投資顧問会社の法人営業を経て、米系資産運用コンサルティング会社にて事業開発担当ディレクターを務める。2004年に米系組織人事マネジメントコンサルティング会社であるマーサーへ転身。取締役クライアントサービス代表を経て、2013年取締役COOに就任。その後、2015年にライフネット生命保険株式会社に転じ、取締役副社長に就任。2020年4月よりネッツトヨタニューリー北大阪株式会社社外取締役を兼務。2021年一般社団法人日本CHRO協会理事に就任。日本証券アナリスト協会検定会員。MBTI認定ユーザー。


デュアルキャリアの50代。

-まずは、お二方のキャリアから教えてください。

中島:僕は、今年54歳。20年を銀行員として事業開発を手がけた後、インフォマート創業者に声をかけられて2010年からインフォマートに常務取締役としてアサインされました。

西田:銀行員からスタートだったんですね。かなり大きなジョブチェンジでしたよね?

中島:そうなんですよ。銀行員としても、非常に楽しく仕事をしていたんですが、インフォマートは世の中を変える可能性がある事業モデルだったんです。インフォマートは、あらゆる企業間取引を電子化し、それを世の中の標準化することを手がけています。一言で説明するなら、facebookやインスタグラムは個人間をつなぎますが、私たちは企業と企業をつなぐ会社です。

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-社内ではどのような仕事がメインなんですか?

中島:会社を良くするため、役職に囚われず、人事・教育、ありとあらゆることが今の僕のミッションですね。西田さんも金融業界のご出身でしたよね?

西田:えぇ。私は今年57歳で、キャリアの前半は金融で、後半は人事・経営のデュアルキャリアですね。少し詳しく話すと、証券会社の営業から、海外留学を経て、ファンドマネージャーを経験し、その後、米系年金資産運用コンサルティング会社でファンド・オブ・ファンズの立ち上げを含む事業開発を手がけました。その後は大きくキャリアチェンジして、米系の組織人材マネジメントコンサルティングファームへ転職することになります。

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中島:ひとついいですか?なぜ、金融から人事に?

西田:当時、バブルの余韻がまだ残っていたこともあり、金融業界がちょっと異常だったんですよね。その時に、自分自身が本当に何をしたいのかなと考え、行き着いたのが「人の問題」でした。人の問題は、ビジネスの本質でもあるので、いつまでもなくならないのではないかと思ったんです。もちろん、もともと人が好きというのはありますけどね。人にまつわる問題は、絶対的な解がありません。そこに惹かれたんです。

中島:素晴らしいですね!

西田:そのタイミングで、自分自身のライフワークとして、次世代リーダーの育成塾も始めたんです。

中島:育成塾まで手がけられたんですね。

西田:様々な企業のオピニオンリーダーの方に「自社のリーダーを作るだけでなく、日本全体のためにリーダー育成を手がけませんか?」とお声がけして、当時約10もの塾をまとめていました。その中のひとつの塾の塾長に当時ライフネット生命会長だった出口さんがいたんです。4期目の塾が修了した時点で出口さんからお声掛けをいただいて、ライフネット生命へ副社長として転じました。今はCHROも兼任しています。

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-ライフネット生命は、ただの保険会社ではなく、ネットで保険を販売するという当時では先鋭的なビジネスモデルでしたよね。

西田:そうですね。創業当時「インターネットで、保険は絶対に売れない」と言われていましたが、今ではありがたいことにお客様もネットで保険を検討・購入するのが当たり前になりました。実は「DX」と呼ぶには、私たちの事業はデジタルシフトのほんの入口に過ぎないと思っていますが、貢献はできたのかもしれませんね。

-2社とも、デジタルシフトを牽引されてきた企業と認識されないほど、私たちの日常に溶け込んでいると考えています。今日は、お二方のお話、とても楽しみにしています。

ディザスターとDX。

-2020年は、コロナ禍の話題を避けて通れないと思います。このディザスター、どのようにお考えですか?

西田:ジェネリックな見解ですが、物事すべからく起承転結、栄枯盛衰があるとすれば、既存の枠組みの大きな転換によって世の中自体は衰退に向かっているのかもしれませんね。今まさに、当事者としてその過程を目の当たりにしているところかもしれません。1つの原因がDXの遅れではないかと思います。DX、デジタルシフトは世界のゲームのルールを変えることだと思うんです。成功体験を引きずってしまい、この新しいルールに日本は乗り切れなかった。コロナ禍で、そのルールチェンジを強制的にしている印象ですね。仕事の仕方が変わる、生活様式が変わる、すなわち、ヒトの価値観や生き方が大きく変わろうとしていますが、それをコロナというインシデントが変化の速度にドライブをかけているという現実があります。好む好まざるにかかわらず、これまでのようにリアルな接触がなくても実務的には済んでしまうことが明らかになりましたので、それを受け止める必要があります。データサイエンスの進展は、詳細なデータ分析によって、ヒトの思考や行動を自分自身が気付く前に先回りして対応されてしまう世界を作り上げることを意味します。そうすると将来的にはAIに先回りされている感覚すらなくなるかもしれません。

中島:おっしゃる通り、コロナでリモート化を強制したことは、DXの社会実装にとっては追い風ですね。DX化って大きく2つの観点があると思っていて。ひとつは、企業のトップラインを伸ばすためのDX化。こちらはかなりドライブがかかったと思います。もう1つが効率化、要はコスト削減のためにDX化することだと思うんです。前者の推進には、ドライブがかかっていると思うんですが、こと後者の効率化に関しては、コロナ禍においても、まだまだドライブがかかっていない印象を受けていますね。

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-それは、なぜですか?

中島:インフォマートの手がける請求書の電子化を例えにお話しします。世界全体で見ると、イタリアのように、BtoBの請求書業務の100%デジタル化に成功している国もあります。スウェーデンが60~70%のデジタル化に成功。それが、日本では、たったの2%なんです。数字から見ても、こと効率化のためのDXには、ドライブがかかっているとは思えない状況ですね。

-世界から見ると、桁外れに遅れているんですね。

中島:えぇ。西田さんと同じ見解で、日本は今まさに衰退の一途を辿っていると捉えています。明るい話題として、2023年のインボイス制度の制定があります。先ほど申し上げたイタリアなども結局企業からの発信だけでなく、国策として行政を絡めて取り組んだ結果の100%DXなので、2023年を目処にDX化にドライブをかけないといけませんね。

ロイヤリティからエンゲージメントへ。

-先ほど西田さんが、世界のルールが変わるとおっしゃられていましたが、もう少し詳しくお聞きできませんか?

西田:DXが進んでいくことによって、これまでのオペレーション的な仕事はやはり減っていくと思っています。会社や仕事の観点から言うと、実際に、テクノロジーの発達でヒトがこれまでのペレーショナルな労働から解放され、働くってなんだろう、生きるってなんだろう、とあらためて哲学的な思考をめぐらせる状況が起きています。それは、イコール会社の労使関係が変化することを示唆してると思います。

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中島:そうですね。

西田:これまでは会社が採用してあげる、仕事や役割を与えてあげる、人事異動を含めキャリアを積ませてあげる、報酬を与えてあげる、でした。その代わり、会社に忠誠を尽くすことを求めてきました。もちろん、生きるため、自分のため、世の中のため、もあったと思いますが、どちらかと言うと、家庭や自分よりも、会社を優先してきたのが戦後高度経済成長期からバブル期に至るまでの世代ではなかったかと思います。

中島:企業戦士と呼ばれたりしましたよね(笑)

西田:しましたね(笑)。ところが、今は違います。オペレーショナルな仕事から解放された労働者は、ヒトが果たすべき役割が何かを考え始め、会社が主体ではなく、自分、ヒトそのものが主体であることに気付いて、若者を中心に、過去に美徳と言われていたものや、既成の価値観を捨て去って、ヒト中心の新しい働き方や生き方を主張し始めています。実際、それが多くの人に支持され始めることで、会社も自らのスタンスを再考せざるを得ない状態になっていると思います。

-なるほど。ビジネスのルールはもとより、個人の価値観まで変わってしまった。

西田:えぇ。日本は今まで美徳としていたものを捨て去り、既成概念にとらわれない働き方を企業も個人も、模索していると思うんですよね。

中島:日本で一番障壁になっているのはその既成概念じゃないかと思います。とにかく変化を嫌がる方が多い。その結果、DXを先延ばしにし、国家全体が衰退した。

-既成概念だったり、個人的な価値観の変化が問題の深層だと思いますが、それは企業側でフォローできるんですか?

西田:グラックスバーグの実験にあるロウソク問題でも示唆されるように、オペレーショナル的な仕事は、金銭的インセンティブが効きます。一方で、クリエイティブな仕事にはそれが足かせになるケースが多い。では、オペレーショナルな仕事から脱却し、クリエイティブな仕事へとシフトした人をモティベートするために企業ができることは何か。この実現には、意味付け、内的な動機付けが必要なんです。すなわち、それはエンゲージメントを高めなければならないことを意味します。

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中島:ロイヤリティからエンゲージメントへと、価値観がシフトしていますよね。

西田:結局、自己実現欲求の充実へとうまいこと導いてあげることが大事ですよね。社員の目標と会社のミッションのベクトルの方向性を一致させ、共に成長していくモデルを構築する。そのために、私は、「経営理念」がとても大事だと思いますね。本当の意味で理念に共鳴してもらわないと、これからの経営は立ち行かない。主体が会社ではなく、個人になったことで、選んでもらえる会社に生まれ変わる必要がある。

中島:理念と経営戦略の合致は、難しいですが今とても必要ですね。

西田:ライフネット生命も、インフォマートさんも会社としては、まだ創業期だと捉えています。いわゆる大企業は、経営理念が形骸化して機能していない例が散見されますが、私たちの経営理念はまだ形骸化する前なんです。なので、理念と経営を常に見直し、ブラッシュアップを欠かさず、フレッシュな状態に保つことが何よりも望まれているのかなと思います。

中島:すごく共感しますね。

西田:ライフネット生命では、信頼の文化の醸成というのも大事にしています。失敗しても再チャレンジできる、弱さをさらけ出せるという心理的安全性を担保してあげる。オキシトシンが満ち溢れた組織にすることで、常に社員をモティベートしていける文化を大事にしています。

中島:私たち経営幹部がその辺りのチューニングを常にしていないといけないということですね。

西田:求心力は経営理念とミッションが担います。ライフネット生命には、理念に共鳴して入社してくれている人ばかりなので、ちょっとやそっとでは揺らぎません。それこそ、自分の求める環境と思いが実現できるということで、様々な業界からいろいろな壁を乗り越えてまでも参画をしてくれています。最後は、そこが企業の強さの根源になるのだと思いますね。

中島:会社としての求心力が求められていますよね。1+1が2ではなく、何十倍にもなるのが会社のダイナミズムですし、チームの良いところですね。一方で私は、就労人口の3割くらいはフリーランスになるのではないかなと考えています。仕事はロイヤリティだと割り切って働く人も一定数いますし、それは多様性の一環ではあると思うんです。だから、フリーランス人口が増える。企業が中心になって非常に効率いい社会が形成されるのではないかとも思っています。

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労使環境の変化。セルフマネージメントがベースの社会へ。

-今、フリーランスのお話が出ましたが、複業規定・転職など、労使関係の変化はまだまだ注目されています。その辺りはどのようにお考えですか?

中島:インフォマートのことを言うと、今まではトップダウン型の企業だったんですね。それでは、個が活躍しにくく自家中毒を起こしてしまう。だから、僕は転職を推奨するようにしています。自分自身も海外勤務経験があるのですが、そもそもの「転職」の考え方が特にアメリカと日本ではまるで違う。アメリカでは「転職する」って、基本的にはすごくおめでたいこととして捉えられるんですが、日本ですとどうも裏切りとして捉えられるようなイメージがあります。その辺りの精神的な部分から抜本的に変更していくように社内で働きかけています

西田:最近では、転職・複業の議論は当たり前にされるようになりましたね。実はライフネット生命は、副業に関しては、2010年から解禁して取り組んでいます

-10年前!かなり早い制度導入ですね!

西田:そして、2018年に、僕が人事担当になった際に、解禁だけでなく「推奨」するようにしたんです。結果として、社員の約15%が複業するようになりました

中島:約15%!すごい割合ですね。業務に支障はないんですか?

西田:本業に支障はないのか?と良く問われます(笑)。これからは、個人がどれだけ「自律的」な行動がとれるかがキーワードなので、まずは、自分のセルフマネージメントができるということが、仕事をする上でのベースになると考えています。

中島:あぁそうか。本業に支障をきたすようでは、そもそもこれからの仕事のベースができていないということか。

-ある意味では、ふるいにかけているとも言えますね。

西田:いえ、もちろん、信頼の文化が会社にあるので、安心してトライはしてもらえますし、実際、自律した精神を持った個人は、セルフマネージメントできています。そもそもスキルというのは、座学の研修では身につかないと考えています。個人としてリスクを背負い、社内外で物凄い経験をすることでしか身に付きません。社員を解放して外で自己成長し、それを本業にフィードバックしてもらえるなら、こんなにいいことはありませんよね。

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中島:いいことだらけですね(笑)

西田:僕自身も、言い出しっぺとして、率先して社外役員や顧問なんかをいくつか兼任するようにしたんです。おかげで、忙しくなりすぎていますけど(笑)。

中島:(笑)

過酷な世界でリスキリングがマスト。

西田:今は既に20代、30代の学びで40代、50代、60代をやり過ごせる時代は終わりました。今回のテーマの通り、DXということでゲームのルールが変わる中にいるわけですので、昔のルールの中での戦い方は役に立たなくなります。幸いにもテクノロジーの発達により、学びの機会も手軽に割とたやすく得られるようにもなりましたので、現役でいるかぎりにおいては、40代は20代、30代の二倍、50代は三倍学ぶ必要があると思います。

中島:全くその通りですよね。私たちが、50代までに培ってきたものを捨てる必要がある

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西田:先日発表された世界経済フォーラムの「The Future of Jobs Report 2020」によると、「今後5年間で、人間、機械、アルゴリズムの労働分担が進むことで、8,500万件の仕事がなくなり、9,700万件の新たな仕事が生まれる」という予測があります。
これ、もう少しブレイクダウンすると2025年までに企業は6%の人員削減が必要となり、社員の二人に一人はデジタル分野への「リスキリング(Re-skilling)」が必要となり、それ以外の社員もその人の持つ40%のスキルは変化する労働市場へ適応させる必要があるそうです。すなわち、新たな仕事が増えても、デジタル分野への「リスキリング」ができなければ、失業してしまう。大失業時代の到来を回避するため、体力があるうちに政府、企業、個人が一体となって、デジタルスキル習得に向けたリスキリングを開始しなければならないということです。

中島:非常に厳しい世界ですね。個人のアップデートがマストだということですね。僕はリスキリングの前にマインドセットが、とても障壁になっていると思う。私たち50代以降が、自分たちの正しいと思ってきたことを捨てて、新しい考え方をどれだけ取り入れて学ぶか、それに尽きると思います。もちろん、若い世代にかなわない部分は、きちんと尊重し、任せることはマストですが。

西田:おっしゃる通りですね。実は、今回ちょっと面白いことをしてみたんです。リスキリングの参考にもなると思って、ライフネット生命社内のデータサイエンティストに「実際、一緒に働くメンバーに、どれくらいのスキルを望んでいる?どの程度のデータサイエンスに関する知識があったら、仲間として一緒に働きやすい?」って聞いてみたんです。

中島:保険のデータを扱うのでしたら、トップレベルのデータサイエンティストですよね。それは、面白い!

西田:かなり専門的なデータサイエンティスト・アナリストなので、1つの指標として面白いですよね。

中島:かなり、興味があります。

西田:1つ目に、「機械学習のビジネス事例の知識」は必須だと。2つ目は、平均値や相関係数などの言葉であったり、正規分布や検定といった「統計の知識・技術」。そして、3つ目がその「統計の延長上にある機械学習についての知識」。具体的には2次回帰のような簡単な回帰分析や、決定木分析(ディシジョンツリー)やk-means法(非階層型クラスタリングのアルゴリズム)と言った常套手法、更に、ニューラルネットの基礎の基礎、なのだそうです。

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-専門的な部署にお話を聞いたとはいえ、ビジネスとシステムが融合するには、相当なレベルを求められるということですね。いわゆるちょっとした「勉強」だけでは、リスキリングが難しいように思います。

西田:私自身も結構ハードル高いなと感じました。なので、先ほど言った通り、今までの数倍の努力が必要になりますね。そしてこれは、専門職に限った話ではない。

-全てのポジションにそれほどの知識が求められるということですか?

西田:そうです。例えば…データサイエンティストのような専門レベルの高い人材を雇おうとすると、人事が機能しないことがあるんです。

-人事が機能しない?

西田:人事が相応の知識がないと「具体的にどんなスキルの人材が必要なのか」を理解できないんですよ。

-あ、そうか。専門的な人材を雇うためには、専門知識のある人事が必要だということですね。

西田:そうなんです。なので、今の人事の例だけでなく、厳しいですが全ての人にとってリスキリングは、これからの社会に必須だと思います。

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採用は、特化型?バランス型?

-実際、そこまでのスキルを求めるとなると、現状、人材はどのように獲得するんでしょうか?そもそも人材が非常に少ないですよね。

西田:新卒採用に関しては、学生時代にDXの専門分野を学んでいるか否かで、入社時から驚くほどの年収格差が広がっていますよね。これからは、その差がもっと顕著になると思います。

中島:採用、本当に厳しいですよね。実際、ライフネット生命さんは、採用で試してらっしゃることはありますか。

西田:私たちは、産学連携から取り組みました。まずは、大学の研究室と共同研究プロジェクトを立ち上げることで、プロジェクトのペルソナに合った優秀な学生を数名派遣してもらいました。

中島:非常に専門的なインターンシップ。面白いですね。

西田:来ていただいた学生からすると、研究室では難しいローデータを扱って研究ができる機会ってすごく貴重なんです。その間に、社員と交流し、会社の雰囲気を味わってもらい、理念をきちんと伝える。理念に共鳴してもらうことで、結果としてGAFAへ行きそうな優秀な学生を採用することができました

中島:それは素晴らしいですね。やはりここでも理念が非常に重要ということですね。

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世界観の構築。妄想力がこれからの人材のヒント。

-現在の社会的には、そこまでレベルの高い人材でない…と思うのが大多数だと思います。そこまでの専門的でない部分で、少し採用のヒントになることはありませんか?

西田:DXって結局手段でしかないですよね。DXで実現できる未来を、どうやって妄想し世界観を構築するのか。それは専門スキルだけではなく、全ての人が考えていかないといけない命題ではないかと思います。

中島:妄想力。面白いですね。確かにDXは未来への1つの手段でしかない。

西田:この妄想力を高めるために僕は7つのスキルが全ての人に求められると思っています。少し長くなりますが(笑)。

中島:是非、教えてください(笑)。

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西田:1つ目が、美意識。これは、意思決定のフレームワークが汎用化する中にあって、最終的な差別化の源泉は直感力になりますから、それを生み出すベースを磨く必要があると思います。2つ目は、歴史に学ぶこと。ヘーゲルの弁証法のように、人類は同じようなことを繰り返しながら、少しずつ社会をアップデートさせていっている。だからこそ、状況は違ってもすごく過去が参考になるんです。3つ目が、軸を持つこと。先ほどのリスキリングをする、勉強をするというときに、自分自身の軸がないと、どうしてもブレてしまう。4つ目に、「幹事力」を磨く

中島:幹事力!はじめて聞きました。

西田:換言するなら、良い仲間を持つということです。仲間は力になります。仲間を持つために面倒な幹事役を引き受けることがパーソナルネットワークを作る効率よい方法になります。幹事役は黒子でありながら、誰もが名前を覚えてくれ、誰もが感謝してくれます。なので、幹事をやることで、良質な仲間を作っていける

中島:確かにそうですね。

西田:私自身も、これまでたくさんの勉強会などの幹事を行うことで、様々な方々と信頼関係を築いてきました。5つ目は、複数のキャリアを持つ。これは、自分自身のデュアルキャリア経験からしても必須かなと思います。自己成長にも有効な手段です。兼職・複職を認めてくれる会社で働くべきです。そういう会社は社員のことを一番に考えてくれている証拠です。
6つ目は、運動することです(笑)。

中島:僕は、もろに体育会系だったので、得意なやつです(笑)。

西田:脳科学的には、ストレスはやる気を損ね、集中力を低下させ、病気や精神状態の劣化を招いて生産性を低下させる諸悪の根源と言われています。そのストレスを引き起こすコルチゾールに対抗するのって、対処療法としてはお酒とか抗うつ剤という手段はありますが、唯一の根本的な解決策は運動しかないという研究結果で出ています。

-簡単なようですが、なかなか続かないですよね(笑)。

西田:7つ目は多様性、ダイバーシティ。イノベーションを起こせる人が価値ある人であるとすれば、多様な人を尊重し、交わり、創発を促すことこそイノベーションを生む近道になります。この7つは、これからの全てのポジションの採用人材像にマッチしますね。

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既存社員への教育課題を解決する。

-現在、すでに活躍されている社員のために何か試していることはありますか?

中島:そこは、インフォマートの課題でもありますね。今までは、事業モデルに依存して成長できましたが、社員に対するリスキリングは、まだまだ始めたばかりです。これから組織力をあげていくタイミングでもあります。リーダー育成に力を一番注いでいるんですが、サラリーではなく、違う報酬をどうやって与えるか。達成感と成長。

西田:ライフネット生命では、成長度評価を導入しました業績貢献度と別軸で、個人の一年間の成長差分を評価する制度です。社員自身が自己成長を実感しているか否かがエンゲージメントに大きく関わってくると思っています。

-自己成長ってなかなか評価が難しいですよね。

西田:今って、やはり個の時代なんですよね。どういうことかというと、会社は勉強する環境を整えるということも大切ですが、やる気さえあれば、会社を頼らずともネット上に有益なコンテンツは溢れているのも事実です。ゆえに、“自律的に学ぶことの大切さ”を伝えることも重要です。ライフネット生命ではその一環として「ピアラーニング」をはじめました

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中島:ピアラーニング!すごく興味ありますね。

西田:個々の社員が磨いた経験やスキルを、社内でのオンライン勉強会を通じて、同僚に教えるということに取り組んでいます。社員が主役になって、スキルを教え合うことで、それぞれが自立して学ぶことができるんですね。

中島:それは素晴らしいですね。インフォマートでも取り組みたいです。いつ頃から取り組んでいるんですか?

西田:この4月からの取り組みなので、まだまだトライ&エラーの期間中ですね。ですが、現段階でもとても社内の評判はいいです。

中島:教える方が、教わるよりも全然勉強になりますよね。実際わかっているつもりでも、人に伝えるとなると言葉として出てこなかったりします。自分自身の曖昧な部分がなくなります。

西田:あとは、社内チャットも頻繁に活用しています。外で聞いた情報や貴重な話を全社員に共有するんです。

-業務外のことも共有されるんですね。

西田:同業他社の情報なんかを共有するよりも、異業種や他業界のものを共有した方が、良いアイデアにつながるんですよね。全く関係ない情報にこそ、ヒントがたくさんありますよね。

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DX社会実現のため、私たちに必要なこと。

-これからDXの先に待つ、未来に向けて、どんな人間・社会を描いてらっしゃいますか?

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西田:すごく現実的な話をすると、リスキリングができる人・できない人の格差は広がり、日本は衰退に向かってしまう可能性は高いと思います。一部の専門知識のある人たちは、地球規模でボーダレスに生きていけるとは思います。ただですね、ひとつ、明るい兆しとして、4年前にKaggle(予測モデリング及び分析手法関連のプラットフォーム)を利用する上位100人の国別ランキングが発表されました。断トツ一位はアメリカで、二位はロシアでしたが、なんと日本は三位にランクしていました。最近であれば、画像を無から生成するGANという技術がありますが、そのアーキテクチャーにおけるロス制御は日本人の貢献が大きかったりします。すなわち、全体では日本は遅れているかもしれないですが、一部の尖った人達は十分に世界で通用する技量を持っていることを表していると思っています。そう言った、専門的で世界に通用する尖った人材を中心にリスキリングの裾野を広げていくことが、未来への正しい選択なのではないかと思っています。

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中島:僕の答えは、DX化をスピーディにすすめるために、ひとつはリスクを恐れないことかなと思います。ゼロリスク症候群が日本のDX化への最大障壁ですね。もうひとつは、先送りをしないということ。全ての世代が、もうDXを皮切りに始まるデジタルと融和した未来から逃れられない。だからこそ、今にきちんと向き合うことがとても重要です。そして、DXが完全に社会実装した未来は、効率化し無駄のない世界なんですね。すると、国民全部の時間があまる。なので、3つの時間の使い方があると思います。ひとつ、自己研鑽し自己成長をすすめる。2つ目は家族と過ごす。3つ目は、「ぼーっとする」(笑)。このぼーっとすることで、想像力が増し、DXより先の未来を描けると思います。

西田:脳をニュートラルにすることが、直感力をアップさせると言われていますね。

中島:そうですね。そうして、新しいことを生み出し、個人個人が成長し、幸福を増す。そのために、僕たちはひとまずDXを推進していきたいですね。

-本日は、ありがとうございました。

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Less/on.

非常に厳しく、そして真摯に未来を語っていただいた長時間の対談、どうだっただろう。DXが進むことで、個が浮き彫りにされる未来をお二方は描いているように思った。ただ、そこにはひとかけらの光や、私たちが日常でできることや、大事にしなければならないことが散見していたと思う。これからの未来に向けて、考えるヒントになれば非常に嬉しいことだ。

(おわり)

ありがとうございます。更新を楽しみにしていただければ幸いでございます。
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デジタルトランスフォーメーション・デジタルシフトを推進する企業の学びのメディア「Less/on.」。企業の枠を超え、様々な知財を惜しみなくシェアし、相互学習することで、より良い未来を創出していきます。